突然の別れ その5 完
ケンプーは骨になった。
全くとどこおりなく。骨はシートベルトにがっちり固定して持って帰った。
私の実家に帰って少しお茶をした。連日深酒をして色々と行動していたから疲れが溜まっていた。葬儀も無事に終わりひと段落して緊張の糸が切れたのか、ドッと疲れが出てついつい長居してしまった。
実家を出てからは観覧車に乗った。実家の近くのショッピングモールの屋上ある観覧車で、なんかのキャンペーンの景品なのか、観覧車の無料チケットを私の母親からちょっと前にもらっていた。
闘病生活でしばらくはいけないなーなんて思って観覧車のチケットを放置してたものの、放置していた理由もなくなったので、チケットを見てみたら有効期限は今日、ケンプーを葬儀に出した6/30だった。
ケンプーもお空に行くのに寂しくならないように、なるべく高いところに行こう。というわけで観覧車に乗った。
ケンプーも観覧車に乗せたかったので連れて行きたいのだが、はた目から見ると骨壺を持ってショッピングモールをうろつく怪しいやつになってしまうので、紙袋に入れて持ち歩いた。
観覧車は待ち時間もなくすんなりと入れた。椅子に座って、紙袋から骨壺を取り出し、ずいぶんと小さくなってしまった息子を膝の上に乗せて、ゆっくりとお空に向かっていった。
ああ、これでお別れなんだなと思うと自然と涙が出てきた。厳密に言えばケンプーが事切れたその時すでにお別れでもあるのだが、私達なりのけじめのつけ方というか、けじめをつけるキッカケを作りたかったんだと思う。そういう意味では葬式なんかも、故人を偲ぶという意味合いとは別に自分自身の気持ちに一旦整理をつけるって意味合いもあるんだな、と自分の大切な家族を失って、自分自身で葬儀屋の手配などして初めて気付くことができた。
観覧車が最高地点に到達した。あっちに行っても楽しく遊べよー、とか今まで苦しいのをよく頑張ったね、とか思いつく限りケンプーに労いの言葉をかけた。
地面に戻ってきた。お腹が空いたので担々麺を食べた。うまかった。
ケンプーがちゃんとお空に行けたか、途中で迷ったのか結局着いてきちゃったのかはわからない。そんなスピリチュアルな能力は持ち合わせてないので確認なんかできない。
ただ私たちとしては持ちうる時間とお金と体力と知恵で、最大限ケンプーを送れたかなと思ってます。
月並みですが心の中でケンプーは力強く生きています。
今までたくさんの思い出をありがとう。
そしてお読みいただいてありがとうございました。
おわり