突然の別れ その4
寝てても覚めてても結局次の日は来た。
寝れない寝れないと言いながら結局2、3時には眠りについたんだろう、寝不足で辛いとかそう言う感じはなくスッキリしていた。
ケンプーともこれでお別れ。
そう思うと名残惜しさも倍増するも、朝10時から葬儀屋に行くことになっているので少しバタバタとしていた。燃やしに行きたくないのに燃やすために急がないといけないとなるとなんとも言い難い気持ちにもなった。
お嫁と娘はちょっと黒目な洋服、私はあいにく天気が良くなかったので、ケンプーがちゃんとお空に行けるように、明るい空色のシャツを着ていった。
結局一度しか使わなかったアウトドアワゴンは車のトランクの横幅目一杯広げて棺桶的な役割を果たしていた。アウトドアワゴンの使い方としては不本意ではあるが、即席の霊柩車が出来たわけである。
葬儀屋に行くまえに自分の実家に寄って父親に一緒に来てもらった。ケンプーのワゴンを運んでもらったり、一時的に娘を持っていて貰ったりといろいろ手助けをしてくれた。
葬儀屋に到着。外観はあまり良くないものの内観は綺麗な感じだった。ケンプーの立て看板まであった。
中に入って待合室もとても綺麗で花が飾ってあったり写真が飾ってあったりと人間のそれと遜色がなかった。
嫁は手紙を書いてケンプーの脇に挟んだ。後日何を書いたか聞いたところ、月並みなことだと言いはぐらかされた。
余談ではあるが、葬式のコースのオプションとして、ペットのDNAを採取してカードに出来るがどうかという提案を受けた。
ケンプーの思い出になるようなものならなんでも欲しい、多少値段がはろうともしょうがないって気持ちになっているであろう私達ですら、なんでDNA。。。というコレジャナイ感がすごかったので丁重にお断りした。まるで使い道がわからない。クローンでも作るのだろうか。
そんな一幕もありしばらくしていると燃やす準備ができたとのこと。
ケンプーを燃やす台の上に置く。昨日買ったひまわりをたくさん置いてやった。まあこの手紙をしっかりと脇に挟み直した。これで一人じゃないからね。
これでケンプーをモフモフ出来るが最後だ。生身のケンプーに触れられる最後のチャンスだ。覚悟なんて出来てるわけない。一昨日まで元気にご飯食ってたんだぞ。先月まで一緒に海に行ったり花見したりドッグランいったり普通にしてたんだぞ。当たり前のように楽しい毎日をこんなに尊いものだと感じることもできぬまま過ごしていたにちがいない。そんなもん失ってみないと気づけない。
気持ちとは裏腹に死んでいったケンプー。このまま放っておいてもいずれ腐敗してしまう。であれば一番綺麗な状態でお別れを言いたい。分かっている。分かってるよ。それでも悲しいんだって。
焼却炉はおそらく高温なんだろう。なんとも言えないブザーのような音がけたたましく鳴っていた。
焼却炉の両開き戸が開いてケンくんが中に入って行った。
戸が閉まった。
1時間程でケンくんは骨になっていました。
骨格がしっかりしていたケンくんだから骨の一つ一つが太かった。ひとつひとつ私とまあこで骨を拾い上げ骨壷に納めました。
どんどん運びやすくなっていくケンくん。
骨壷をシートベルトにしっかり止めて持って帰りました。笑
その5に続けます。